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ハイキュー!!の名セリフ「ただのぶかつ君」は英語版ではどう翻訳されている?

©古舘春一/集英社・「ハイキュー!!」製作委員会・MBS
「Haikyu: Season 2」より

アニメ「ハイキュー!!セカンドシーズン」から登場する、梟谷学園高等学校に属する「木兎光太郎ぼくとこうたろう」。
ポジションはウイングスパイカーで、全国で5本指に入る実力を持ったスパイカーです。

常にテンションが高く、ちょっとおバカな性格の彼ですが、彼の名シーン(迷シーン?)の1つに「ただのぶかつ」君のくだりがあるかと思います。

「ハイキュー!!セカンドシーズン」の第8話で、月島が木兎と黒尾に「ただの部活なのになぜそこまで真剣になれるのか」と質問します。
月島が言ったのは「ただの部活」ですが、木兎はこれを「ただ・のぶかつ(多田信勝?)」と人の名前と勘違いしてしまうシーンです。

日本語だからこそ成立しているこのギャグシーンですが、果たして英語版ではどのように翻訳されているのでしょうか?

このシーン、実は英語字幕版と英語吹き替え音声版だと全く異なる翻訳のされ方をしています。
そして英語吹き替え音声の方は驚愕の翻訳のされ方をしているのです!

北米版「ハイキュー!!」を実際に視聴した筆者が、実際のシーンから書き起こして紹介してみます。

英語字幕の翻訳はやや忠実…だがちょっと苦しい

まずは英語字幕の翻訳から紹介します。

©古舘春一/集英社・「ハイキュー!!」製作委員会・MBS
「Haikyu: Season 2」より

※日本語は原文セリフ

月島
月島
I am genuinely curious about this.
僕は純粋に疑問なんですが、

Why do you get so desperate to do all of this?
どうしてそんなに必死にやるんですか?

Volleyball is just a club, and maybe you’ll get to write, “I worked really hard in my club in high school,” on your resume, right?
バレーはたかが部活で、将来履歴書に「学生時代部活を頑張りました」って書けるくらいの価値じゃないんですか?

木兎
木兎
“Just a club”?
ただのぶかつって…

That almost sounds like someone’s name.
なんか人の名前っぽいな。

黒尾
黒尾
Oh like Mary Club?
おぉ!「ただのぶかつ」君か!

No wait, I guess it was “just some club.”
いや、ちげーよ!「たかが部活」だよ!

木兎
木兎
Aw, man! So it doesn’t sound like someone’s name.
ああ、そうか!人名になんねーよ!

Man, I was so close! Damn, it!
おしかった、くそ!

genuinely
[副詞] 純粋に、心からの

desperate
[形容詞] 必死で、死にもの狂いで

resume
[名詞] 履歴書

月島が言う「ただの部活」は「just a club」となっています。
それに対し木兎が「That almost sounds like someone’s name.=人の名前みたいに聞こえる」と発言し、黒尾が「like Mary Club?=Mary Clubさんみたいにか?」と言っています。

う〜ん、やや強引な翻訳ですね(笑)

確かに実際にClubという名字は存在するようです。もともとはイギリス発祥の名字らしいです。
ただ、あまり聞かない名字かと思います。

ここで疑問なのは、Maryという名前がどこから出てきたかです。Maryという名前もあるのでおかしくはないんですが、唐突です。
何かそういう名前の有名な人がいるのかと思ったのですが、私の調べた限りでは見つけることはできませんでした。

恐らく、人の名前みたいということで、適当にClubという名字に合う名前を持ってきただけのように思います。

実際、海外の方の反応で、このMary Clubというギャグには何か元ネタがあるのか?と質問されている方もいました。
教えてあげたいのですが、なかなか説明に困ってしまいます(笑)

いずれにせよ、原文の日本語セリフのように「ただのぶかつ」が綺麗に名字と名前っぽくなっているのに対し、英語翻訳ではClubのみが名字のように聞こえるという翻訳になっているので、面白さは半減していますね。

英語吹き替え音声の翻訳は全く違うものに!

続いて英語吹き替え音声の翻訳を紹介します。

上記、英語字幕で見た通り、このセリフのギャグを英語で成立させるのはなかなか難しいです。
なので、英語吹き替え音声では思い切って全く違うセリフに変えてしまおうという対応が取られたようです。

※日本語は筆者の意訳

月島
月島
I’m asking a sincere question here.
率直な質問をします。

What drives you guys to work so hard?
何があなたたちをそんなに真剣にさせるんですか?

Volleyball is the only extracurricular activity.
バレーボールはただの課外活動です。

Is there any benefit to it other than being able to put it on your college application or something like that?
大学の入学書類とかに書くことができる以外の恩恵が何かあるんでしょうか?

木兎
木兎
Just an extracurricular?
ただの課外活動だって?

I have a mind to punch you in the face.
お前の顔をぶん殴ってやりたいぜ。

黒尾
黒尾
Dude, maybe he’s more interested in his grades.
おい、彼はきっと(勉強の)成績の方にもっと興味があるんだよ。

Not that you are knowing anything about that.
お前はそういうことが全く分からないんだろうけど。

木兎
木兎
What did you say? I’ve been getting better.
なんだと?俺だって良くなってきてるんだよ。

I got a 47 on my TRIG test!
三角法のテストで47点も取ったんだぜ!

drive
[動詞] (人を)駆り立てる

extracurricular
[形容詞] 課外の

grades
[名詞] 成績

Not that 〜
〜というわけではない

TRIG
trigonometry=三角法 の略

英語吹き替え音声では、「ただの部活」が人の名前のように聞こえるというくだりは排除して、成績に無頓着そうな木兎を黒尾がからかうというくだりに変わっています。

しかし、この翻訳は賛否両論なのでは?と感じますね。
木兎が「顔をぶん殴ってやりたい」と発言しますが、個人的には木兎はそんなことを率直に言うだろうかと疑問に思います。
原作のセリフでは、月島がバレーを「ただの部活」と癪に障るような表現をするのに対し、ちょっとおバカで、ある意味純粋な木兎がとんちんかんな解釈をするという、木兎のキャラクター性と面白さを両立させた名シーンだと思います。
この翻訳だと木兎が視聴者に与えるキャラクター像も少し違ってくるのではないかと思ってしまいます。

ただし、英語字幕のように無理に翻訳して微妙なギャグにするよりかは、より自然な会話として成立させようという意図は感じられます。
このあたりの翻訳は非常に難しいところですね。

今回ご紹介した例は、日本語→英語の翻訳の場合でしたが、これは英語→日本語の場合にもよく起こることだと思います。
原文の言葉でしか理解できない面白さというものが必ずありますので、だからこそ我々は外国語を学ばなければいけないと改めて感じました!

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