2022年にTV放送されたアニメ『SPYxFAMILY』。
日本のみならず海外でも大きな反響を巻き起こした大人気作品です。
スパイである父、殺し屋である母、エスパーである少女がお互いの秘密を隠しながら「仮初めの家族」を築き、様々な困難を解決していくホームコメディ作品となっています。
2023年には第二期の放送、さらに劇場版の公開も控えており、まだまだ目の離すことができない作品です。
そんなSPYxFAMILYの中でも欠かせない存在なのが、メインキャラクターの一人であり、人の心を読むことができる超能力の持ち主『アーニャ』です。
孤児院の出身で実際の年齢は不詳です。
見た目は4、5歳くらいですが、学校の入学条件を満たすために6歳と偽ることになります。
そのため、周りの子供達よりもややたどたどしい言葉遣いで話すのですが、その独特な言い回しが読者の心を掴み、『アーニャ語』『アーニャ語録』と呼ばれ愛されています。
さて、そんなアーニャ語ですが、英語版だとどのように表現されているのでしょうか?
今回は2023年6月にリリースされたSPYxFAMILYの北米版Blu-ray/DVDをもとに、英語版のアーニャ語がどのように表現されているかを紹介します!
ちち、はは
アーニャはお父さん(役)であるロイドのことを「ちち」、お母さん(役)であるヨルのことを「はは」と呼びます。
これは「Papa」「Mama」と翻訳されています。
物語の中では最初にロイドがアーニャを孤児院から引き取ったときに、以下のように『お父様』と呼ぶように指示しました。
俺のことはお父様と呼ぶように。
しかしアーニャは『ちち(Papa)』と呼んだのでした。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第1話より
英語圏で「お父さん」「お母さん」と呼ぶときに最も使われている言葉は「dad」「mom」です。
子供だけでなく大人も普通に使う言葉です。
逆に子供しか使わない言葉は「daddy」「mommy」です。
では「papa」「mama」はどうかというと、普段はほとんど使われるのを聞くことがない言葉のようです。
しかし、アメリカのドラマや映画においては時折登場する言葉のようで、しかもお金持ちの人々が使う傾向にあるという意見があるみたいです。
このため人によっては気取ったように聞こえるという方もいます。
日本の家庭では小さな子どもに対して自分たち両親のことを「ちち」「はは」と呼ばせる家庭は少数派だと思うので、アーニャがこの言葉を使うことがちょっとした違和感を生み出し、視聴者に可愛らしい印象を与えています。
これを英語圏でもやはり少数派の「papa」「mama」と翻訳することで、原作が持っているちょっとした違和感を再現しているように思います。
うい
アーニャが誰かから指示を受けた時、「うい」と返事します。
これは英語版では「Yep.」と翻訳されています。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第1話より
「Yep」は「Yes」のかなりカジュアルな言い方です。
このため、家族や友人の間で使うことは全く問題ありませんが、フォーマルな場で使うことは避けたほうが良いでしょう。
ちなみに「Yep」は「Yup」と書かれることもありますが意味は同じです。
発音はカタカタで書くと「ヤップ」のようになります。
また「うい」は場面によっては「‘Kay」と翻訳されていることもありました。
「’Kay」は「Okay」の短縮形で、「オーケイ」の「オー」の部分が発音されず、「ケイ」と発音されます。
こちらもとてもカジュアルな言い方です。
おでけけ
アーニャは家族と外出する「おでかけ」のことを「おでけけ」と呼びます。
英語版では「ooting」と翻訳されています。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第3話より
これは正しい英語では「outing」です。
「outing」は「おでかけ、散歩、外出」の意味があります。
アーニャが「ooting」と言った後には、ロイドから
『お出かけ』な。
と訂正されています。
英語版においてもこのような発音間違いを入れることで、アーニャの舌足らずなところを表現しているようです。
くびちょんぱ、からだちょんぱ
アーニャが美術館を訪れたときのこと。
大人しくしているようにロイドから言われましたが、頭のない像と体のない像を見て「くびちょんぱ!からだちょんぱ!」と物騒なことを叫びます。
このセリフは英語版では
Head’s been choppy-chopped!
Body’s been choppy-chopped!
と翻訳されています。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第3話より
この文章は文法的に言うと現在完了形の受動態が使われていて、省略せずに書くと
Head has been choppy-chopped!
Body has been choppy-chopped!
となります。
「choppy」という単語は「途切れ途切れの」という意味の形容詞です。
「chopped」という単語は「chop」の過去分詞形で「ぶつ切りにされた」「刻まれた」などの意味があります。
本来、この2つの単語を繋げた言葉はないのですが、これを無理やり繋げてアーニャらしい言葉として翻訳されているようです。
だいじょぶます、がんばるます
入学試験の直前、ロイドはアーニャに対して言葉遣いが正しくできるかと確認します。
それに対してアーニャは「だいじょぶます。がんばるます。」と答え、ロイドの不安を逆に大きくさせてしまったのでした(笑)
英語版ではこのセリフは
All set, please.
Will do my best, please.
と翻訳されています。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第4話より
「All set」は「準備できた」という意味の熟語です。
「Are you all set? = 準備できた?」や「I’m all set. = 準備万端。」のように使われます。
また、お会計の際に店員から「Are you all set?」と聞かれることがありますが、これは「(お会計の)準備ができましたか?」ということでつまり「お会計してよろしいですか?」という意味になります。
さらに、レストランで注文する際に「I’m all set.」と言えば「今までの注文で全てです」という意味で使えますので、非常に役立つ表現です。
「Will do my best」は「I will do my best」の主語Iが省略された文章で、「ベストを尽くします」という意味です。使い所は難しいですが、英語の文章においても主語が省略されることは時折あります。
さて、一見すると自然なフレーズに見えますが、文章の後にpleaseがついていますね。
pleaseとつけることで丁寧さを表すことができる場合がありますが、この文章では非常に不自然です。
アーニャがまだ幼いために、丁寧さを表す表現としてpleaseをつけることしか知らないということを表しているのだと思われます。
おはやいます
アーニャは「おはようございます」のことを「おはやいます」と言います。
寝ぼけているからそうなったんでしょうか?もしくは普段からそうなのでしょうか?
英語版では「Morning, pwease.」となっていました。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第9話より
「pwease」は「please」のことで、アーニャの舌足らずなところを表現してこのような綴りになっています。
また、上述したようにアーニャは丁寧な表現として、後ろにpleaseとつけることしか知らないということで、こちらも後ろにpleaseがついているようです。
もちろん、不自然な表現ですよ(笑)
あざざます
アーニャが褒められたときに発言する「あざざます」。
もちろん「ありがとうございます」のことです。
英語版では「Fank you very much.」と翻訳されています。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第6話より
もちろん本来の言葉は「Thank you very much.」です。
こちらもあえて不正確な発音とすることで、アーニャの舌足らずなところを表現しています。
いてらさい
ロイドが仕事のために出かける際、アーニャが「いてらさい」と声をかけます。
もちろん「いってらっしゃい」と言いたかったんでしょうね。
英語版では
Have a knees day.
と翻訳されていました。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第6話より
正しい文章で言うなら「Have a nice day.」で「良い一日を」という意味です。
「knees」は「膝」の複数形です。
つまり「Have a knees day.」は「よい膝の日を」という意味で、かなりへんてこな表現になってしまいます(笑)
niceとkneesが発音がやや似ているので、アーニャが混同してしまっているということを表しているのだと思います。
よろろすおねがいするます
アーニャがお人形遊びしているところです。
新入りの「ぺんぎん」がアーニャの相棒である「キメラ長官」に挨拶します。
「よろしくお願いします」と言うべきところが「よろろすおねがいするます」となってしまいます。
こちらは英語版では
It is a pweasure to meet your acquaintenance.
となっていました。

『SPYxFAMILY: Season 1 Part 1』第12話より
こちらの文章はかなりツッコミどころ満載な文章です。
まず単語の綴りの観点から言うと「pweasure」は「pleasure=喜び」となるべきで、「acquaintenance」は「acquaintance=知り合い、知人」となるべきです。
アーニャの舌足らずな部分を表現してわざと綴りを間違えているわけです。
文法の観点から言うと、2つの表現が混ざった文章になっています。
①It it a pleasure to meet you. = あなたにお会いできて嬉しいです。
②I’m pleased to make your acquaintance. = あなたとお知り合いになれて嬉しいです。
この2つの表現がごちゃごちゃになってしまって、奇妙な文章になっているようです。
しかし、英語学習初心者からすると、このようなアーニャの言い間違いは親近感の持てるものかもしれませんね。
いかがでしたか?
SPYxFAMILYの北米版には日本語音声と共に英語字幕と英語吹き替え音声が収録されています。
英語字幕と英語吹き替え音声が異なるため、聞き取りに苦労するかもしれませんが作品が好きな方にはおすすめです!
ぜひ挑戦してみてください!