「おつかれさま」と英語で表現したい時、なんと言えばいいでしょうか?
直訳して「You must be tired.(疲れているでしょう)」なんて言っても、相手が困惑するだけで、あなたが意図している気持ちは伝わらないでしょう。
「おつかれさま」は直訳できないのです。
大事なのは、どういう場面で、どういう気持をこめて「おつかれさま」と言っているかです。
今回は、日本語特有の表現である「おつかれさま」が海外のアニメやゲームではどのように翻訳されているのか、実際のシーンをもとに紹介してみます。
『おつかれさま』の翻訳は3つに分類できる
上記で書いたように「おつかれさま」は直訳できません。
大事なのは「どういう場面で、どのような気持ちをこめて言っているか」です。
例えば友達や同僚で会った時の「おつかれさま」は挨拶に近いでしょう。
しかし、一仕事終えた後に後に言う「おつかれさま」は感謝や労いの言葉でしょう。
このように日本語では「おつかれさま」と言えば、相手がその気持を汲み取って自分の中で解釈してくれます。
日本語はものすごく曖昧で、ある意味便利な言語ですが、同時に空気を読むことを必要とする言語なのです。
しかし、英語は違います。
英語は自分の言いたいことをはっきりと言うことを求められる言語なので、どのような気持ちをこめて言っているのか、しっかりと伝えなくてはいけません。
さて、「おつかれさま」の英語翻訳を見てみると、下記の3つに分類できるかと思います。
①挨拶
②成功を分かち合う
③労をねぎらい感謝する
それぞれの場合について、実際のシーンをもとに紹介してみます。
ちなみに今回は、英語の下に書いてある日本語は、原文のセリフを書いています。
①挨拶として翻訳する場合
まずは「挨拶」として翻訳している場合です。
『東京リベンジャーズ/Tokyo Revengers』より
アニメ『東京リベンジャーズ』3話からです。
タケミチとキヨマサのタイマン中に、東京卍會総長である「佐野万次郎」が現れて、少年たちは頭を下げて挨拶します。
お疲れ様です!総長!
ここではGood day(こんにちは)と、挨拶として翻訳されています。
Good dayはHelloなどよりも、やや形式ばったフォーマルな挨拶です。
目上の存在である佐野万次郎への挨拶として、このような表現を選んだのでしょう。
また、commanderは主に軍隊なので使われ「指揮官」や「司令官」を意味します。イギリスでは「警視長」を指すそうです。
この場面での「お疲れ様です」はまさに挨拶として使われているので、英訳も挨拶としての翻訳となっています。
『龍が如く3/Yakuza 3』より
続いてゲーム『龍が如く3』からです。
ヤクザ組織「東城会」の会長である堂島が屋敷に戻った時のシーンです。
組員たちが挨拶して迎え入れます。
お疲れさまですっ!
ここでは帰ってきた会長に対して組員たがWelcome back, sir!と言い、迎え入れます。
このように、英語版では場面に応じた挨拶として翻訳されています。
不良モノや極道モノは「お疲れ様です!」とよく挨拶として使っていますよね。
しかも「こんにちは」や「久しぶりですね」や「おかえりなさい」といった色んな場面で使えることに気付くと思います。
改めて便利な言葉だなぁと感じます。
②成功を分かち合う翻訳の場合
今度は、成功を分かち合い声をかけるための言葉として翻訳している場合です。
『FINAL FANTASY VII REMAKE』より
ゲーム『FINAL FANTASY VII REMAKE』からです。
クラウドが雇われた仕事を無事に終えてミッドガルにたどり着き、ティファと久しぶりに再開するシーンです。
ティファは無事にたどり着いたクラウドに対し、「おつかれさま」と声をかけます。
おつかれさま。
ここではYou made it.と翻訳されています。
You made it.は主に2つの意味で使われます。
①何か仕事やミッションをやり遂げた時「よくやったね」という意味。You did it.と近いニュアンス。
②目的の場所に到着した時「よく着いたね」という意味。You arrived.と近いニュアンス。
ここでは、クラウドが仕事を無事に終えた直後であり、かつミッドガルに辿り着いたシーンなのでどちらの意味にもとれます。
いずれにせよ、ティファはクラウドの無事と成功を分かち合う意味で「おつかれさま」と言ったはずで、そう考えるとYou made it.の翻訳は適しているように感じます。
③労をねぎらい感謝として翻訳する場合
最後は労をねぎらって感謝として翻訳する場合のシーンを紹介します。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/Evangelion 1.11: You Are (Not) Alone』より
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』からです。
シンジがエヴァに乗った検査を終えた後、オペレーターのマヤが「おつかれさま」と声をかけます。
シンジくん、お疲れ様。
ここではThank you Shinji.とまず感謝を示し、続いてGood work.とシンジの仕事ぶりも認めて褒めてくれています。
ここでのマヤの「おつかれさま」はシンジの協力のおかげで検査を無事に終えることができ、それに対する感謝やねぎらいの意味で発言したはずです。
このように感謝や相手の仕事ぶりを認めるような場合にも「おつかれさま」と言うので、英訳もその意図に沿った翻訳の仕方をしています。
『ハンターxハンター/Hunter x Hunter』135話より
続いて『ハンターxハンター』135話からです。
キメラアントとの戦いを終えたハンター協会会長のネテロに対して、ビーンズが「おつかれさまでした」と声をかけます。
会長…お疲れさまでした。
Rest in peace. You certainly earned it.
ゆっくりお休みになってください。
certainly
[副詞] 間違いなく、たしかに
earn
[動詞] 得る、(報酬などを)受けるに値する
ここでも、大きな仕事を終えた会長に対し、ビーンズはThank you for your job, well doneと感謝を示して、よくやりましたねと讃えています。
まさしくビーンズの気持ちを表すのにピッタリな英訳となっています。
まとめ:だから日本語は面白い
このように日本語の「おつかれさま」には色々な意味が込められており、場面によって解釈が違います。
英語訳ではその場面によって違う解釈をしっかりと言葉に変えて伝えなくてはいけません。
その方が分かりやすい反面、直接言ってしまうと言葉の中に持たせた含みがなくなってしまい、奥ゆかしさがなくなってしまうように思います。
特に上記で示したハンターハンターのシーンでは、英訳ではThank you for your job, well done, chairman.と今回の仕事に対する「おつかれさまでした」となっています。
しかし、私の捉え方としては、ビーンズはネテロがハンター協会の会長として努めた全ての歩みに対して、またネテロの人生に対して「大変でしたね、よくやってくれましたね、お世話になりました」と一言には表すことができない気持ちを含ませているように思うのです。
こういうところが英語を話す方にとってみれば「日本人ってはっきりしないわ」と言われる所以かもしれませんが(笑)、私からすると美学でもあると思うんですよね。
英語に限らず外国語を勉強していると、外国語では表現できないような母国語の表現の存在に気づき、そこから自分の国の文化に関して色々な発見をすることができます。
これもまた語学の醍醐味の一つですね。
アニメやゲームを通して英語を学ぶことによって、楽しく勉強することができます。
また、リスニングの練習になったり、自然な英語表現や豊富な語彙を身につけることができます。
下記の記事におすすめのアニメを紹介していますので是非参考にしてみてください。