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ぼっち・ざ・ろっく!『星座になれたら』の歌詞を英訳してみる

bocchi the rock if i could be a constellation
©はまじあき/芳文社・アニプレックス

2022年に放映されたTVアニメの中で、特に反響の大きかった作品の1つに「ぼっち・ざ・ろっく!」が挙げられるのではないでしょうか。

「ぼっち・ざ・ろっく!」(通称:ぼざろ)は「はまじあき」さんによる日本の4コマ漫画を原作としたアニメ作品です。
2022年10月から12月にかけて放送されました。

ひきこもりがちで友達がいなくコミュ障という、いわゆる「陰キャ」の女子高校生が、バンド活動を通して成長していく物語となっています。
登場人物たちが女の子ばかり、女子高生、かわいい絵柄、趣味、日常系という近年よくありがちな設定に見えますが、その破天荒なアニメ表現、作品を彩る丁寧な作画や演出、さらに楽曲など大反響を呼びました。

その反響は日本だけにとどまらず、リリースしたアルバムはSpotify(音楽ストリーミングサービス)のGlobal Top Debut Albumで、邦楽として唯一ランクインするなど世界的に話題を呼びました。

英語では「コミュ障」のことを「Socially Awkward=人付き合いが下手」や「~ have a social anxiety=社交不安障害がある」、「陰キャ」は「Introverts=内向的な人」と翻訳されることが多いみたいです。
しかし、どれも日本語のように新しく生まれた言葉ではありませんし、微妙に概念は異なります。やはり「コミュ障」「陰キャ」というのは日本独特の文化から生まれ概念なのかなと感じます。

しかしながら、こういった日本人には比較的親近感を覚える=relatableな概念(※個人の感想)が海外の方々にも案外通ずるものがあったことが、海を超えて話題を呼んだ理由なのかなと思っています。

さて、作品の中で主人公たちが結成したバンド『結束バンド』が作った曲という設定で『星座になれたら』という曲があります。
TVアニメの第12話で劇中曲として披露されました。

作品をご覧になったことがある方なら分かるかと思いますが、劇中ではこの作詞を担当したのが主人公の「後藤ひとり」という設定になっています。
そして、この歌詞を読んで想像するのは、同じバンドメンバーでありギターボーカルを担当する「喜多郁代」との関係を描いた歌詞なのだろうということです。

このロマンチックで、時に胸を締め付けるような切なさを孕んだ歌詞を英訳してみようと思います。

なお、今回は直訳というよりも、歌詞の意図をできるだけ汲んだ意訳的な翻訳で挑戦してみました。
受け取り手によって細かい解釈違いがあるかと思いますがご了承下さい。

星座になれたら
If I Could Be a Constellation

作詞:樋口愛
作曲:内藤英雅
編曲:三井律郎

(英訳:shiki)

もうすぐ時計は6時
The clock is almost six
もうそこに一番星
I’ve just seen the first star right there
影を踏んで 夜に紛れたくなる帰り道
I step on the shadows and wanna blend into the night on the way home
どんなに探してみても
No matter how hard I try to look for it everywhere
一つしかない星
I will reach only this star
何億光年 離れたところからあんなに輝く
that is shining so bright from billions of light-years away

いいな 君は みんなから愛されて
It’s good, you are so popular with everyone
「いいや 僕は ずっと一人きりさ」
“It’s okay, I’ll always be alone”

君と集まって星座になれたら
If I could be a constellation with you
星降る夜 一瞬の願い事
On the starry sky, my fleeting wish is
きらめいて ゆらめいて 震えてるシグナル
shining, wavering, trembling signal
君と集まって星座になれたら
If I could be a constellation with you
空見上げて 指を差されるような
People would look up at the sky and point us
つないだ線 解かないで
Please never untie the strings connecting us
僕がどんなに眩しくても
even if I’m too bright for you

もうすぐ時計は8時
The clock is almost eight
夜空に満天の星
I’ve just seen a million stars in the sky
何億光年 離れたところにはもうないかもしれない
But billions of light-years away from here, they might have already gone

月が綺麗で 泣きそうになるのは
The beautiful moon almost tears me up
いつの日にか 別れが来るから
Because I know that we eventually have to say Goodbye

君と集まって星座になれたら
If I could be a constellation with you
彗星みたい 流れるひとりごと
Like a comet, my solitary whisper flows
消えていく 残像は 真夜中のプリズム
and those disappearing after-images look like a midnight prism
君と集まって星座になれたら
If I could be a constellation with you
切なる願い 誰かに届いたら
If my genuine wish will reach someone,
変われるかな 夜の淵を
I wonder if I could get matured
なぞるような こんな僕でも
Even I’m just the person who traces the edge of the night

遥か彼方 僕らは出会ってしまった
We happened to meet one another far away
カルマだから 何度も出会ってしまうよ
I’d say it’s Karma, so we’re destined to meet one another over and over
雲の隙間で
In between the clouds

君と集まって星座になれたら
If I could be a constellation with you
夜広げて 描こう絵空事
Let’s stretch out the night, draw our pipe dream on it
暗闇を 照らすような 満月じゃなくても
Even if the moon doesn’t brighten up the darkness
だから集まって星座になりたい
That’s why I wanna be a constellation with you
色とりどりの光 放つような
and give off a million colors of lights
つないだ線 解かないよ
I’ll never untie the strings connecting us
君がどんなに眩しくても
even if you’re too bright for me

解説

ここからは解説というか、翻訳する上で工夫した部分、苦労した部分などを紹介します。

いいな 君は みんなから愛されて
It’s good, you are so popular with everyone
「いいや 僕は ずっと一人きりさ」
“It’s okay, I’ll always be alone”

「いいな」と「いいや」という翻訳に地味に悩まされます。
「いいな」は羨ましがっているはずなので、I’m envious. とか I envy you. でもいいかなと思いましたが、直球すぎるのと「いいや」との対比が難しくなるのでやめました。
結局、It’s good. と It’s okay. が調和もとれている感じがするのでこの翻訳。

「君はみんなから愛されて」は直訳だと
You are loved by everyone.
ですが、lovedだとちょっと重すぎる気が。
作品的、または喜多ちゃんのことを歌っているとするなら「人気者でいいな」というニュアンスだと思いますので、You are so popular with everyone. としました。

つないだ線 解かないで
Please never untie the strings connecting us

直訳的に翻訳するなら
Please don’t break a connected line

Please don’t untie the connected strings
という感じでしょうか。

しかし、ここでいう「つないだ線」というのは、「私」と「あなた」をつなぐ線というニュアンスだと思いますので the strings connecting us
さらに、これから先も絶対に解かないでほしいというニュアンスが込められていると思うのでneverという単語を使いました。

彗星みたい 流れるひとりごと
Like a comet, my solitary whisper flows

「ひとりごと」の翻訳に悩みました。
ひとりごとは英単語1つで表現するなら「monologue」という単語がありますが、お芝居のモノローグのように滔々と語る様も含まれてきますので、歌詞の情景にしっくりこない気がします。
また「soliloquy」という難しい単語もあるみたいですが、一般的でない気がするので却下。

一言で表現しないなら「talk to myself」という表現もあるようですが、やはり情景に合わない気がしました。

結局、私の解釈で「my solitary whisper = 私の孤独なささやき」と翻訳しました。whisperとしたほうが、夜に静かに呟く様が出て情景に合っている気がしますがどうでしょうか?

ちなみに「ひとりごと」は Hitori Gotoh = ひとり後藤 と主人公の名前を英語式に読んだものになるんですね。
原作者さんはここまで意識して名前をつけたとしたらすごいですね。

変われるかな 夜の淵を
I wonder if I could get matured
なぞるような こんな僕でも
Even I’m just the person who traces the edge of the night

「変われるかな」という部分、素直に訳せばchangeという単語が使われるかと思います。

しかし、個人的には「変わる」というのが「精神面の成長」を指しているのかなと感じたので、精神的な成長・成熟も意味することができる「mature」という単語を使い
I wonder if I could get matured
としました。

遥か彼方 僕らは出会ってしまった
We happened to meet one another far away
カルマだから 何度も出会ってしまうよ
I’d say it’s Karma, so we’re destined to meet one another over and over

1文目「僕らは出会ってしまった」のところは、偶然にも出会ってしまったという意味を込めて happened to ~という表現を使い We happened to meet one another far awayに。

そして2文目は1文目への応答として、「偶然じゃなくてカルマ(宿命、運命)なんだよ」というニュアンスが込められていると思うので、「I’d say it’s Karma.=私ならカルマと言うよ。」という文頭にしました。
さらに運命づけられているという意味の be destined to ~という表現を使い、so we’re destined to meet one another over and over と翻訳しました。

私もネイティブではないのでネイティブからすると不自然な英語表現があるかもしれません。
また、こういった解釈もあるのでは?など議論の余地は大いにあると思います。

ご意見やご指摘ある際にはぜひご連絡ください!

 

星座になれたら – 結束バンド