ジョジョの奇妙な冒険第三部「スターダストクルセイダース」に登場する架空のゲーム「Oh, That’s a Baseball!」。
DIOの住む館にて、承太郎がテレンス・T・ダービーと対決したゲームです。
二人のスタンドがそのままゲームの中のグラフィックの中に登場して野球をするという、ビジュアル的にもインパクト大のゲームでした。
さて、スターダストクルセイダースのアニメ版は海外でも翻訳されて流通しているわけですが、この「That’s a Baseball!」は海外の視聴者にとっては、日本人とは違った意味でインパクト大。
なぜならタイトルを聞いただけで大爆笑してしまうからです。
いったいなぜ?
この記事を読むと、その理由が分かりますし、英語の「冠詞」といういまいち捉えづらい文法がちょっと理解できるようになるかもしれません。
「Oh, That’s a Baseball!」と聞いた外国人の反応
まずはゲームのタイトルが「Oh, That’s a Baseball!」と分かったときの海外視聴者の反応を一部紹介してみます。
「Oh, That’s a Baseball!」(大爆笑)こいつは傑作だ!
え!?これがゲームタイトルなの?「Oh, That’s a Baseball!」って(笑)
英語が…
来た来た!有名なミームだ。
※海外ではもはやミームと化している
ハハハ!面白いね。
このようにほとんどの人がタイトルを聞いただけで笑ってしまいます。
タイトルを読み上げている方がハイテンションなのも理由の1つなのですが、このタイトル、やっぱりどこか不自然なのです。
「Oh, That’s a Baseball!」を翻訳すると?
みなさんは「Oh, That’s a Baseball!」というタイトルを聞いて、日本語でなんと翻訳しますか?
大半の人が「あれが野球だ!」と思うのではないでしょうか?
まぁゲームのタイトルとしてあってもおかしくはなさそうなタイトルですよね。
しかし、ネイティブの人が聞いて思い浮かべるのはそうではありません。
ネイティブが思い浮かべるのは「あれが野球ボールだ!」です。
「野球」ではなく「野球ボール」なのです。
文としては間違っていないのですが、これがゲームタイトルなわけです。
だからこそ、とても不自然に聞こえて笑ってしまうのです。
なぜ「野球」ではなく「野球ボール」になるのか?
ポイントは冠詞の「a」がついていることです。
結論を先に書くと、冠詞のつかないbaseballは「野球」を意味し、冠詞のついたa baseballは「野球ボール」を意味するのです。
baseball 野球
a baseball 野球ボール
このあたりは冠詞がない日本語を話す日本人の我々にとってはなかなか捉えにくい概念です。
(実は私もなんとなく理論ではわかっているのですが、感覚的にはまだしっくりきていないというのが正直なところ…)
以下は私が勉強してきたこと、さらに他の方が解説していた情報をひっくるめて簡単にまとめた説明です。
まず冠詞の説明ですが、冠詞には「不定冠詞」と「定冠詞」の2種類があります。
不定冠詞… a , an (単数形の場合につく)
定冠詞… the (単数形、複数形どちらにもつく)
そしてこれら冠詞は名詞の前に付くというのが大原則です。
名詞というのは人や物、事、場所など名称を表す単語で、有形・無形のものが含まれます。
さて、冠詞は名詞の前につくものですが、名詞の中には(単数形にも関わらず)冠詞がつかないものもあります。
これらを「無冠詞」と呼びます。
無冠詞… 冠詞のつかない名詞
baseballの例でいうと、「野球ボール」と言いたいときは冠詞が伴い、the baseballが不定冠詞を伴った形、一方 a baseball が定冠詞を伴った形です。
そして「野球」と言いたいときは単に baseball と無冠詞になります。
さて、ここからが本題。では冠詞が付く場合と冠詞がつかない場合は何が違うのか?
単刀直入に言うと「冠詞が付く場合は、それが物理的な形を持ってこの世に存在しており、ありありと思い浮かべることができるもの」です。
baseballの場合で考えてみましょう。
「野球ボール」というものは、実際にこの世に形を持って物理的に存在し、知っている人ならありありと形を思い浮かべることができますよね?
だから冠詞がついて a baseball と表現します。
では「野球」の場合はどうでしょうか?
「野球」はスポーツの1種であって概念的な存在です。ルールや動作、試合の流れなど全てをひっくるめて「野球」という競技であって、「野球」という競技が一定の形を持って物理的に存在しているわけではありませんよね。
だから冠詞がつかず単に baseball と表現するのです。
「Oh, That’s a Baseball!」と言う状況とは…?
そんなわけで「Oh, That’s a Baseball!」を日本語に翻訳すると「あっ、あれは野球ボールだ!」とか「あぁ、あれが野球ボールか!」になるわけですが、皆さんはこれまでの人生においてこのフレーズを何回口に出して言ったことがあるでしょうか?
おそらくほとんどの人はゼロなのではないでしょうか(笑)
それくらい意外と使いどころがないセリフなのです。
さて、ここからが面白いです。
海外のファンたちは、じゃぁ実際にこのセリフを言うとしたらどんなシチュエーションがありえるのかという大喜利が始まるのです。
例えば以下のような感じ。
9〜9.25インチの外周を持った球形で、中心にゴムまたはコルクがありそれを編んだ糸で包んでいて、さらに馬革または牛革で硬く縫ったつなぎ目が2つある物体を見たときのセリフ。
何かがぶつかってそれが野球ボールだったと分かったときのセリフ。
空を見上げたら野球ボールが自分の顔に向かって飛んできている時のセリフ。
鳥を見つめているはずがなぜか自分の顔にどんどん近づいてきたときのセリフ。
なんでみんなが棒で小さいバスケットボールの球をバシバシ打っているのかが分かったときのセリフ。
テニスボールの中に変な球が混ざっていてそれが何か分かったときのセリフ。
不思議な形のテニスボールを見ていて混乱していたときのセリフ。
確かにこのようなシチュエーションでもない限り言うことはないセリフでしょう。
個人的にはテニスボールの例えなんかは秀逸だと思います(笑)
また、さらにこのフレーズを面白くしている要素が、アニメ本編を見た方なら分かると思うのですが「Oh, That’s a baseball!」と声優さんが言うときに、驚きと喜びに満ちたハイテンションなトーンで読み上げていることです。
だからこそ、このフレーズが外国のファンにとって面白おかしいシーンとなっているのです。
ゲーム中の「ENGRISH」も外国人にとって面白ポイント
ちなみにこの回では「Oh, That’s a Baseball!」以外にも、English Speakerだけが笑ってしまう奇妙な英語があります。
つまり「ENGRISH」です。
「ENGRISH」とは「アジア系の英語話者がよく間違う発音、文法を揶揄する俗語」です。
例えば日本人や韓国人が苦手なRとLの発音ができていないこと、日本のカタカナ英語などが挙げられます。
揶揄する言葉なので気分を害される方もいると思いますが、個人的には反面教師として意識することで英語の上達に役立てるべきかなと思います。
さて、「Oh! That’s a Baseball!」の中で承太郎が選んだチームは「Jaguars(ジャガーズ)」でした。
承太郎がチームを選択して決定ボタンを押すと、ゲームの中のナレーターがチーム名を読み上げます。
この時多少英語っぽく発音していますが、カタカナで書くと「ジャガーズ」という発音をしています。
しかし、これが海外で大ウケ。
なぜなら「Jaguar」の正しい発音は、アメリカ発音なら「ja·gwaar(ジャグワァ)」のようになるからです。
以下の動画が実際のアメリカ発音です。
イギリス発音だと「ja·gyoo·uh(ジャギュア)」になります。
いずれにせよ「ジャガー」ではないのです。
これがネイティブにとってみたらインパクト大みたいで、「Oh, That’s a Baseball!」の話題になると決まってこういったコメントが書き込まれます。
※正しいスペルは「Jaguars」。ネイティブには上のように聞こえるらしい。
またこんなコメントも。
みんな「JAGGEEERS!」にばっかり言及してるけど「RED RaGerN!」については何も言わないんだね。
テレンス・T・ダービーの選択したチームは「Red Dragons」でしたが、アニメ本編ではあくまで英語っぽく発音しているだけなので、ネイティブが聞くとこちらも不自然に聞こえるようです。
ちなみに海外の英語吹き替え版だとどうなっているかと言うと、ゲーム中の音声はすべて向こうで録り直したみたいで、ネイティブの発音に置き換わっています。
と、こんなふうに「That’s a Baseball!」の回は海外ではかなりネタとして扱われています。
まぁ原作でもネタ要素多めなので日本でもそういう扱いかとは思いますが、英語圏ではその不自然な英語とあわせて余計にネタとして扱われているわけです。
何にせよ視聴者は楽しんでいるので「オーケーオーケー!」だと思いますが、自分が話す際には気をつけましょう!