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【ジョジョ】英語でプロシュート兄貴の名言「その時スデに行動は終わっているんだッ!」を言うと?

© LUCKY LAND COMMUNICATIONS/ 集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会
『Jojo's Bizarre Adventure: Golden Wind - Part 1』より

『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』では味わい深い様々な名言が登場します。

そしてそれは主人公たちだけではなく、敵チームのキャラクターの発言にも当てはまります。

中でも有名なのは、ヒットマンチームの一人である『プロシュート』の発言です。
その端正な風貌、ハードボイルドな生き様や言動は、敵ながら多くの読者を惹き付ける魅力を持っています。
同じチームであるペッシから「兄貴」と呼ばれているため、ファンからも「プロシュート兄貴」と尊敬の念を込めて呼ばれています。

さて、そのプロシュート兄貴の名言の中で最も有名なのは

「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!

なのではないでしょうか。

今回はそんな兄貴の名言を英語で言うとどうなるのか、Viz Mediaより発売されている北米版『Jojo’s Bizarre Adventure: Golden Wind』より紹介し、解説していきます。

日本語のセリフをおさらい

まずは日本語のセリフをおさらいしておきましょう。

アニメでは15話に登場します。

暗殺チームの一人である『プロシュート』は、同じく暗殺チームでありながら未熟な弟分である『ペッシ』と共に、主人公ジョルノ・ジョバァーナが属するブチャラティチームを追ってフィレンツェ行きの列車に乗車しました。

ペッシはブチャラティチームを目の前にして、自分を鼓舞するかのように「ブッ殺す」と何度も口走りますが、プロシュートはその言葉が気に食いません。

そして、戦闘の最中にペッシはブチャラティチームの一人であるミスタに追い詰められますが、間一髪でプロシュートに助けられます。
プロシュートはペッシに対して、ペッシの心の弱さに対して叱りつけます。

そしてこう発言するのです。

プロシュート
プロシュート
オレたちチームはな!そこら辺のナンパストリートや、仲よしクラブで、「ブッ殺す」「ブッ殺す」って大口叩いて仲間と心をなぐさめあってるような負け犬どもとはわけが違うんだからな。

「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!

プロシュートはそう言って、瀕死状態の横たわるミスタの頭に向かって、何発も銃弾を撃ち込むのでした……。

意味のない大口は叩かない、発言したときにはそれがもう終わっているという有言実行の徹底ぶり。
ギャングとしてのプロシュート兄貴の美学が込められた素晴らしい名言です。

英語吹き替え版のセリフは?

それでは英語吹き替え版のセリフを見てみましょう。

英文の下の翻訳は私の意訳です。本来のセリフと比べたい時は上記の日本語セリフを御覧ください。

プロシュート
プロシュート
We’re not the same as that gang of ass-kissing losers.
俺たちはおべっか使いの負け犬ギャング共とは違うんだ。

We don’t indulge in empty threats or self-cuddling compliments to hide our feeble shortcomings.
俺たちは安全な境遇や、自分の弱っちい欠点を隠すための甘いお世辞に浸ったりなんかしねぇ。

<<Our breed doesn’t need the aid of such lowbrow extravagances to enhance our battle performance.>>
俺たちみたいな種類は、戦闘パフォーマンスを上げるために低能で無節制な言行の助けを必要としたりしねぇんだ。

For the moment we visualize the death of our enemy, their fate is sealed!
俺たちが自分の敵の死を思い描いたその瞬間、奴らの運命は決まったんだ!

They cannot escape the inevitable!
その必然から逃れることなんかできないんだっ!

ass-kissing
[名詞] ごますり、おべっか使い

indulge
[動詞] 好きなだけ耽る、熱中する、ほしいままにする

self-cuddling
自分に甘い
※cuddleは「優しく抱きしめる」の意味

compliment
[名詞] 褒め言葉、お世辞

feeble
[形容詞] 弱々しい、劣った、くだらない

shortcoming
[名詞] 短所、欠点

breed
[名詞] 種類、型

aid
[名詞] 援助、手伝い

lowbrow
[形容詞] 教養の低い

extravagance
[名詞] 無節制な言行、途方も無い言行、浪費、奢り

visualize
[動詞] 〜を心に思い浮かべる、想像する

seal
[動詞](運命などを)決める、定める

inevitable
[形容詞] 避けられない、当然な、必然的な

解説

見て頂けると分かる通り、難しい単語がたくさん使われています。
これが「黄金の風」の英語吹き替え版の特徴で、日本人には馴染みのない難しい単語が多く使われているのです。

しかし、難しい単語が使われているということは、それだけ文学的で意味が深く、格好良く仕上がっているということでもあります。

さらに、原作にない言い回しも含まれていますね。
上記英文で<< >>で囲った文がそうです。

場合にもよりますが、全般的に英語は日本語よりも話すテンポが早いので、ここでは日本語のセリフ通りの英文を読み上げると不自然な間が空いてしまうのでしょう。
これを避けるために翻訳者が流れに沿ったセリフを付け足したのだろうと思われます。

今回は英文がやや難しいので、一文一文解説していきたいと思います。

We’re not the same as that gang of ass-kissing losers.

日本語のセリフだとオレたちチームはな!そこら辺のナンパストリートや、仲よしクラブで、「ブッ殺す」「ブッ殺す」って大口叩いて仲間と心をなぐさめあってるような負け犬どもとはわけが違うんだからなに当たるところですが、英文では2つの文に分割されています。
この文はその最初の一文です。

意訳すると『俺たちはおべっか使いの負け犬ギャング共とは違うんだ』です。

ass-kissingは「おべっか使い」「ごますり」の意味があります。言うまでもなく非常に汚い言葉です(笑)
しかし、ass-kissingで「ごますり」というのは……なるほどなと頷ける言い回しです。
ass-kissing losersで「おべっか使いの負け犬」となります。

We don’t indulge in empty threats or self-cuddling compliments to hide our feeble shortcomings.

上記の文に続く後半の文章です。

意訳すると『俺たちは安全な境遇や、自分の弱っちい欠点を隠すための甘いお世辞に浸ったりなんかしねぇ』です。

日本語セリフでは『そこら辺のナンパストリートや、仲よしクラブで、「ブッ殺す」「ブッ殺す」って大口叩いて仲間と心をなぐさめあってるような負け犬どもとはわけが違う』となっているところなので、微妙に内容を変えて翻訳していますね。
しかし、「自分たちは負け犬共のようにお互い慰めあっているぬるい空気に浸らないんだ」という大まかな意味は十分伝わっています。

indulgeは「好きなだけ耽る」「熱中する」という意味の動詞です。
例えばお酒を好きなだけ楽しむような無節制な状態を、indulge in drinkingと言ったりします。

self-cuddlingという単語ですが「自分に対して甘い」というようなニュアンスの言葉です。
cuddleという単語は「優しく抱きしめる」「寄り添う」という意味があります。
ここではハイフンでつないだ単語になっていますが、調べたところあまり一般的な使われ方ではないようです。
翻訳者の独自のニュアンスなのでしょうが、意味は伝わります。

feeble shortcomingで「弱々しい欠点」の意味です。

Our breed doesn’t need the aid of such lowbrow extravagances to enhance our battle performance.

この節は原文のセリフにはない部分です。
先程も書いたとおり、尺に合わせるために追加されたものかと思われます。もしくは翻訳者の溢れ出る情熱から書かれた言葉ですね(笑)

意訳すると「俺たちみたいな種類は、戦闘パフォーマンスを上げるために低能で無節制な言行の助けを必要としたりしねぇんだ」という意味です。

原文のセリフにある「仲間と慰めあっている連中」というものを意識したセリフまわしで、自分たちは仲間からの意味のない励ましやおべっかは必要ないということを言い表しています。
原文にないセリフということで賛否分かれるかもしれませんが、私はシーンに合ったカッコイイセリフ回しだなと感じます。

breedは動詞だと「産む」「繁殖する」「飼育する」などの意味があり、こちらの意味を知っている方のほうが多いかと思います。
しかし、ここでは名詞的に使われており、名詞では「種族」「タイプ」「品種」の意味があります。

lowbrowは「教養のない」「低俗な」の意味があります。
ちなみにbrowは「額」「まゆげ」を意味します。その昔、知能の低い人は眉毛の位置が普通の人より低い位置にあると言われていたことから産まれた言葉のようです。
(もちろんそんな訳ありませんよね汗)

extravaganceは名詞で「浪費」「奢り」「途方も無い言行や考え」を意味します。

enhanceは動詞で「さらに高める」の意味です。

For the moment we visualize the death of our enemy, their fate is sealed!
They cannot escape the inevitable!

さて、ここが一番カッコイイセリフの部分ですね。
原文のセリフでは『「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!』にあたる部分です。
しかし、そのままきっちりと翻訳されているわけではなく、ある程度意訳されています。

『「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ!』の部分は、For the moment we visualize the death of our enemy と翻訳れており、これは原文のセリフにかなり近いです。

その時スデに行動は終わっているんだッ!の部分は、 their fate is sealed! となっています。

fateは「運命」という単語です。

sealという単語ですが、日本語でも知られているように名詞では貼り付ける「シール」という意味があります。
しかしsealには動詞としての意味もあり、「密封する」「封印する」という意味があります。
さらに、この「開けられないよう封をする」というイメージから「運命などを定める」という意味もあります。
つまりTheir fate is sealed!は 「奴らの運命は決まったんだ!」という意味になるのです。文学的でカッコいい言い回しに仕上がっていると思います。

さらに英語版の翻訳では They cannot escape the inevitable! と付け足すようなセリフが含まれています。
inevitableは「避けられない」「当然な」「必然な」など、自分の力ではどうすることもできず起こってしまうことを表す単語です。
プロシュート兄貴が、自分で敵の運命を定めるので、敵はその運命からは逃れることはできないのだと強調しているのです。

ちなみに、このinevitableという単語は意外と便利な言葉で、時事問題などについて話すときに結構使うことができます。
例えば「少子高齢化は先進国にとって避けられない問題だ」と言いたいときには The declining birth rate is a inevitable problem for developed countries. ということができます。

今回はプロシュート兄貴の名言の英語翻訳について紹介してみました。

原作通りのセリフとはなっていませんが、原作の雰囲気をよく掴み、英語でも自然で格好よく聞こえるような良い翻訳になっていると思います。

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